「勉強しなさい」と言っても勉強しない中学生に、保護者はどう声をかければよいのでしょうか。大阪市鶴見区の個別指導塾トライプラス諸口校の教室長が、中学生への声かけと家庭学習の仕組み作りを解説します。
「あとでやる」の繰り返しに疲れていませんか
保護者:「そろそろ勉強しなさい」
子ども:「あとでやる」
保護者:「あとでって、いつ?」
子ども:「分かってるって」
保護者:「毎日同じことを言わせないで」
こうしたやり取りは、多くの家庭で日常的に起きています。保護者が声をかけるのは、宿題やテストのことが心配だからです。一方で中学生本人も、「勉強しなければならない」と分かっていることは少なくありません。
それでも動けないのは、単純な勉強のやる気不足だけが理由とは限りません。次のような事情が重なっている場合があります。
- 何から始めればよいか決まっていない
- 課題が多く、手を付ける順番が分からない
- 疲れていて、始めるまでの負担が大きい
- 「勉強」という言葉が広すぎる
- 声をかけられるたびに、管理されていると感じる
- 分からない問題が多く、自信を失っている
中学生が動きやすい声かけは、“勉強するかどうか”を迫る言葉ではなく、“いつ・何から・どこまで始めるか”を決める言葉です。
声かけの目的は、言葉で子どもを動かすことではありません。最初の行動を具体的にすることです。
なぜ「勉強しなさい」では動きにくいのか
「勉強」の範囲が広すぎる
数学、英語、宿題、暗記、テスト勉強など、何から始めるか判断できません。
始める時刻が決まっていない
「あとでやる」という言葉のまま、時間だけが過ぎていきます。
課題が難しすぎる
分からない問題が多いと、始めても進まないことが予想され、手が止まりやすくなります。
会話が注意と反発の繰り返しになっている
内容よりも、「言われたこと」への反応が先に出てしまう場合があります。
「勉強しなさい」という言葉そのものが絶対に悪いわけではありません。ただ、具体的な行動が含まれていないため、開始につながりにくいのです。
中学生が始めやすくなる5つの声かけ
ここからは、中学生への声かけを具体的に見直すための言い換え例を紹介します。
「勉強しなさい」から「何から始める?」へ
避けたい言い方
「いつまで遊んでいるの。勉強しなさい」
「勉強」という言葉が広すぎて、何から手をつけるか判断できず、動けなくなってしまいます。
言い換え例
「今日は何を終わらせる予定?」/「最初にするなら、宿題とテスト勉強のどっち?」/「一番短く終わりそうなものはどれ?」/「まず1つ選ぶなら何にする?」
子どもが決められない場合は、保護者が2つの選択肢まで絞ってかまいません。「何でも好きに決めてよい」と丸投げするのではなく、始める課題を具体化することが目的です。
「今すぐやりなさい」から「何時から始める?」へ
避けたい言い方
「今すぐゲームをやめて勉強しなさい」
「今すぐ」は具体的な時刻ではないため、いつまでも先延ばしにできてしまいます。
言い換え例
「19時30分と20時、どちらから始める?」/「夕食前に15分する?それとも夕食後に30分する?」/「休憩が終わったら、何時から始める?」/「始める時刻を自分で決めて教えて」
選択肢は増やしすぎず、現実的な範囲で2択にするのがコツです。決めた時刻になっても始めない場合は、感情的に責めるのではなく、事前に決めた約束を短く確認しましょう。
「全部終わらせなさい」から「最初の10分」に変える
避けたい言い方
「宿題もワークも、今日中に全部終わらせなさい」
終わりが見えない課題量を提示されると、始める前から気持ちが重くなってしまいます。
言い換え例
「最初の10分で、何をする?」/「数学を2問だけ始めてみる?」/「英単語を10個確認したら、一度休憩しよう」/「まずワークを開いて、今日するページを決めよう」
10分や2問は絶対的な数字ではなく、始める負担を小さくするための一例です。始めた後に続けられそうなら続け、難しければ予定を小さく修正しましょう。
「ちゃんとやったの?」から「どこまでできた?」へ
避けたい言い方
「本当にちゃんと勉強したの?」
「ちゃんと」という言葉は基準があいまいで、確認のつもりが問い詰めのように伝わることがあります。
言い換え例
「今日はどこまで進んだ?」/「できるようになった問題はどれ?」/「まだ分からない問題はある?」/「明日に残したものは何?」/「先生に質問したいところはある?」
勉強時間だけでなく、進んだ内容・理解できた内容・残った課題を確認することが大切です。できていない場合も、言い訳を追及するだけで終わらせず、翌日の具体的な修正につなげましょう。
「自分で考えなさい」から「どんな助けが必要?」へ
避けたい言い方
「中学生なんだから、全部自分で考えなさい」
突き放すような言葉は、困っていることを言い出しにくくさせてしまう場合があります。
言い換え例
「予定を一緒に整理する?」/「問題の意味と解き方、どちらで困っている?」/「先生に質問する問題を一緒に選ぶ?」/「静かな場所を作るのと、時間を測るのと、どちらが必要?」/「自分でできるところと、手伝ってほしいところを分けよう」
自立とは、最初からすべて一人でこなすことではありません。必要な助けを言葉にし、少しずつ自分で進められる範囲を広げていくことです。
避けたい声かけと動きやすい声かけの比較
| 避けたい言い方 | 動きやすい声かけ |
|---|---|
| 「勉強しなさい」 | 「今日は何から始める?」 |
| 「今すぐやりなさい」 | 「19時30分と20時、どちらから始める?」 |
| 「全部終わらせなさい」 | 「最初の10分で何をする?」 |
| 「ちゃんとやったの?」 | 「今日はどこまで進んだ?」 |
| 「もっと頑張りなさい」 | 「次に変えることを1つ決めよう」 |
| 「自分で考えなさい」 | 「どんな助けが必要?」 |
| 「スマホばかり見て」 | 「勉強中のスマホはどこに置く?」 |
言い換えの目的は、子どもの機嫌を取ることではありません。行動を具体的にすることです。
声かけだけでは変わらない――必要なのは「始める仕組み」
親の声かけを工夫しても、それだけで勉強習慣が定着するとは限りません。声かけと合わせて、始めやすい仕組みを用意することが重要です。
時刻を固定する
「夕食後」「20時から」など、勉強を始める基準を決めます。
場所を決める
リビング、自室、自習室など、勉強する場所を固定します。
最初の課題を決める
英単語、漢字、計算など、迷わず始められる課題を用意します。
終了条件を決める
「1時間座る」だけでなく、「ワーク2ページ」「間違い3問の解き直し」など、終える内容を決めます。
家庭で使える「10分スタート法」
1.始める時刻を決める
2.スマートフォンやゲームを置く場所を決める
3.最初にする課題を1つ選ぶ
4.10分だけタイマーを設定する
5.終了後に、続けるか短い休憩を取るか決める
6.終わった内容と残った内容を確認する
10分は、すべての家庭に共通する絶対的な時間ではなく、始めるための一例です。長時間続けることよりも、決めた時刻に始める経験を積み重ねることを重視しましょう。
「本人に任せる」と「放置する」は違う
子どもの自主性を尊重することと、何も声をかけないことは同じではありません。任せる部分と確認する部分を分けて考えることが大切です。
本人に任せる部分
- 取り組む教科の順番
- 始める時刻の選択
- 休憩の取り方
- 先生に質問したい内容
- 自分で立てた目標
家庭で確認する部分
- 学校の提出期限
- 必要な宿題が終わっているか
- 睡眠を極端に削っていないか
- スマートフォンなどの家庭内ルール
- 学習計画が現実的か
- 困っている状態を放置していないか
保護者がすべてを管理する状態から、少しずつ本人が決める範囲を広げていきましょう。約束を守れなかった場合も、その場の感情で罰を増やすのではなく、事前に決めたルールと翌日の修正方法を確認することが大切です。
声をかけない方がよいタイミング
次のような場面では、すぐに勉強の話を始めず、少し時間を置くほうがうまくいきやすくなります。
- 学校や部活動から帰宅した直後
- 親子のどちらかが強く怒っているとき
- 子どもが別の課題へ集中しているとき
- 就寝直前
- テスト結果を見た直後で、気持ちが高ぶっているとき
ただし、タイミングを待ち続けて話を先延ばしにしないことも大切です。「夕食後に10分だけ、明日の予定を確認しよう」のように、話す時刻を具体的に決めておくとよいでしょう。
それでも動かないときに確認すること
□ 何をすればよいか本人が理解しているか
□ 課題の量が多すぎないか
□ 内容が難しすぎないか
□ 分からない問題を質問できているか
□ 始める時刻と場所が決まっているか
□ 睡眠不足や疲れが続いていないか
□ スマートフォンなどのルールが曖昧ではないか
□ 親子で決めた予定が現実的か
□ 学校や塾の予定を把握できているか
□ 声かけだけで解決しようとしていないか
動かない状態が長く続く場合は、叱る回数を増やす前に、学校や塾と現在の理解度・課題量・学習方法を共有することをおすすめします。生活や学習への支障が大きいと感じる場合は、家庭だけで抱え込まず、適切な相談先を検討することも選択肢のひとつです。
今夜から使える声かけテンプレート
「今日の宿題とテスト勉強、どちらから始める?」
「19時30分と20時なら、どちらが始めやすい?」
「最初の10分で終えるものを1つ決めよう」
「分からない問題には印を付けて、明日先生に聞こう」
「終わったら、できたことと明日に残すことを確認しよう」
声をかける回数を増やすより、“いつ・何を・どこまで”を一度決めることが大切です。
まとめ
保護者が「勉強しなさい」と言うのは、子どもの将来を心配しているからです。そして中学生本人も、勉強しなければならないと分かっている場合が少なくありません。
動けないときは、やる気だけでなく、課題の量・時間・難易度を確認してみましょう。「勉強」という曖昧な指示を、具体的な最初の行動へ変え、いつ始めるか、何から始めるかを選べる形にすることが第一歩です。
声かけだけでなく、時刻・場所・最初の課題を固定すること。本人任せと放置を混同せず、家庭で確認する線を決めること。そして一度に自立を求めるのではなく、本人が決める範囲を少しずつ広げていくこと。
保護者も中学生も、どちらも責める必要はありません。明日からではなく、今日から一つだけ、言葉を変えてみませんか。
“勉強しなさい”を繰り返す前に、始められる仕組みを作りませんか?
トライプラス諸口校(大阪市鶴見区)は、1対2の担任制個別指導塾です。60分の個別指導に加え、その日に学んだ内容の定着を確認する40分の演習を行い、演習の小テストで80点に届かない場合は説明と再確認をしています。教室長が生徒ごとの進度や課題を管理し、理解度や学校の予定に合わせて、取り組む内容を具体的に決めていきます。茨田中・茨田北中・横堤中など、学校別の定期テスト対策にも対応しており、自習室は開校中無料で利用できます。
0 件のコメント:
コメントを投稿